神奈川県各歯科大学同窓・校友懇和会
神奈川県各歯科大学同窓・校友懇和会医科歯科同窓会が10年ぶりとなる各歯科大学同窓・懇和会の当番校となり、入念な準備を経て7月14日(土)、横浜中 華街ローズホテルにて開催された。 講演会講師は“おおたわ 史絵”氏である。氏は東京女子医大卒業の内科医であり、開業医としての日々の診療のかたわら テレビ、ラジオでコメンテーター、パーソナリティとして活躍中である。また「女医の花道」等の著書も多く、メディア界で注目を集めている。今回は「現代人 の心と体のカルテ」という演題で講演していただいた。 なお今回の講師の選定に当たっては、種々の人脈をつうじた方法ではなくNHKの講師派遣業務の会社 を通じたものであったが、当日の講師控え室での西野会長と講師の懇談のなかで、おおたわ氏のご主人が3代に亘る歯科医師の家系であり、東京歯科大学出身の 歯科医であることが判明したのである。おおたわ氏はその関係で講師に呼ばれたものと思っておられたようである。
講演
私は小さな内科医院を開業し、日々の外来患者の診療に従事している。内科の患者といってもその訴えの中には少なからず、精神神経科領域のものが含ま れている。それらをしかるべき医療機関へ紹介できれば良いのだが、わが国においては精神神経科の診療を受けることに多大な抵抗があるのが現状である。本人 はもとより患者の家族に話しても素直に精神科に行く人はまれである。仕方なく軽症の患者は可能な範囲で、対処している現状である。
パニック障害に陥った 24歳の女性の例である。彼女はある聾学校の新任の教諭でクラスに高校1年の問題児を抱えている。聾唖者でももちろん障害の他の部分では健常者と変わりな く、15~16歳ともなると酒、タバコ、夜遊びにふけるものも現れて4くる。この生徒の親は学校に依存し、帰らない子供を捜せといって、夜中に担任の教諭 にメールを送ってくる。それが度重なり、相当なストレスを受けているという訴えであった。患者に対しては、あまりまじめに親の要求に答えずに気楽にするこ とと、ひどければ担任をはずしてもらうことをアドバイスした。しばらくして来院したが、問題の生徒に関してはかなり改善されたようであるが、依然としてパ ニック症候群のほうは軽快しない。そこでさらに踏み込んで話を聞いてみると、彼女の生い立ちにかなり問題点があることが分かった。郷里に両親と知的障害を 持つ弟がおり、母親が人格障害に陥っているということであった。郷里の家庭に対する心配からこの症状が起きていることが考えられた。
もう一例はうつ病で ある。うつ病は日本人の10人に一人がかかっているとされる、精神疾患である。この例は40台の夫婦が二人ともうつ病であった。ご主人は自営業の不調から うつ病になったと考えられるが、商売が不調とはいえ、急に生活が困窮するほどではなく妻のほうのうつ病の原因が分からなかった。これもさらに話を聞いてい くと二人の子供が全盲で、その世話にかかりきりであることが分かった。小さいころから学校の送り迎えをし、高校生になっても続いている。通常の家庭でも子 供にかかりきりになる時期はあるが、子供に対する愛情と、それはいつか終わることが分かっているから続けることができるのである。終わりのないストレスが うつ病を引き起こしたものと思われる。この妻は不眠を訴えていたり、眠りすぎを訴えたりと、身体的症状が不安定であった。
現代人は不眠の訴えが非常に多 く、睡眠導入剤の売り上げはうなぎ登りである。しかし、不眠に対して薬剤で対処するのは危険である。次第に量が増え依存度が高まってくるからである。不眠 で死亡した例はない。昼間何もしないで夜遅くまでゲームをしたりテレビを見ていてすぐ寝ようとしてもそれは無理な話である。昼間はなるべく体を動かしたほ うが良い。例えばウォーキングなどの運動をすると良い。ウォーキングが良いのは身体的な疲労よりも、歩いているうちにさまざまな刺激が大脳に蓄積されるか らである。大脳が多くの刺激を整理するために睡眠が必要となるのである。
人間からすべての刺激を奪うとどうなるであろうか。窓のない、音のない部屋に何 も与えずに入れると人間は8日間くらいしか耐えられない。その後は大脳が暴走を始め、独り言や意味のない踊りなどを始める。これが拘禁反応である。脳は常 に新しい刺激を求める。日常の繰り返しの仕事で疲労していて、休日には家で一日ごろごろしているのは好ましくない。引きこもりの人は大脳の刺激の整理能力 が不足していて、新しい刺激を拒否している状態である。
最近急にメタボリック症候群が注目されているが、厚生省の政策にあえて乗っかってよく出歩き、頭 と体を使い、心身の健康を保とうではありませんか。
講演会に引き続いて懇親会が行われた。本会副会長上田由利子の開会の辞に続き、西野一紘会長の当番校挨拶があった。「各歯科大学同窓・校友懇和会は昭和 48年に第一回が医科歯科大学の当番校で行われて今回で35回目になる。以前は関連団体から多くの来賓をお招きしていたが、現在では神奈川県歯科医師会長 のみである。懇和会の名のとおり四方山話を楽しむ会となっている。各同窓会、校友会は歯科医師会と違って、それぞれの校風、気風を引き継いでいる、これは 悪い意味では学閥などとよばれるが、先輩後輩の間柄は自然な感情であり、良い方向に利用してもらいたい。」
続いて県歯科医師会長の高橋紀樹先生の来賓挨拶があった。「歯科医師会の組織率は行政への提言に大きな影響があるので未入会者対策に力を入れており、か なり実効が上がっている。この陰には同窓会校友会の力に大きなものを感じる。引き続き大きな団結力を維持していただきたい。」
時期当番校は日本大学歯学部松戸歯学部であり、同窓会神奈川支部の菅野博幸会長の挨拶・乾杯の音頭により歓談に入った。 ここローズホテルは中華街にあ るので料理はもちろん中華料理である。立食ではなく、円卓の指定席であったが宴が進むにつれて人が移動し、コンパニオンが取り分けてくれた料理があふれて いる席が多くあった。コースの順番も分からなくなった料理とお酒を堪能し、懇談に花が咲いた懇和会もいつの間にか時間が経ち、当同窓会の田尻下利夫副会長 の閉会の辞でお開きとなりました。